声優の「裏名」と仕事について

裏名というのを聞いたことがありますか?

裏名というのは、年齢指定の作品に声優が出演する際、普段の名前とは違う名前で活動することです。

人によりますが、決まった裏名を持っている人もいれば、作品ごとに違う裏名を使い、一人でたくさんの裏名を持っている人もいます。

裏名を使う理由

声優が裏名を使うのは、指定された年齢に届かない若い(幼い)ファンが、声優の名前につられてその作品を視聴してしまうのを避けるためです。

「〇〇さんのファン、〇〇さんの名前で検索したら、年齢指定の作品が出てきた。気になるから見ちゃえ」

とならないように、あえて違う名前で出演する人がほとんどです(一部、表名と同じ名前で活動する人もいます)。

声に特徴がある人も多いので、名前が違くとも聞けば「〇〇さんだ」と分かることが多いのですが、それでも「若いファンへの配慮」として裏名を使います。裏名自体が、年齢指定作品の文化になっているとも言えます。

裏名を使うのは「売れていない声優」という考えは古い

裏名で活動をするのは新人やまだ売れていない声優だと言われることが多いのですが、それは一昔前の考えです。

今は年齢指定の作品がかなり増えている(良いのか悪いのか分かりませんが、一般化しつつある)こともあり、かなり売れている声優でも裏名で活動しています。

名前だけ聞くと「え、この人が!」と驚くことも多いです。

人気のある売れっ子声優でも年齢指定の作品に出演しているのは、裏名でも一定のファンがいること、活躍する場を増やしたいことなどがあるでしょう。

来た仕事は基本的に断らないというスタンスの人もいます。

声優は「1本いくら」「1回の収録でいくら」の世界です。仕事をしなければ収入がなく、その仕事も永久にずっと続くわけではありません。

今日は仕事があっても明日はないかもしれないし、来週は仕事がないかもしれません。

今年はスケジュールが埋まっていても来年もそうとは限りません。

個人事業主である声優は、売れっ子であればあるほど、仕事に対して貪欲なのです。

それが年齢指定の作品でもなんでも、「演じることには変わりない」「声優という仕事であることには変わりない」という考えのもと仕事に取組み、非常に良い演技を披露されている方も多いのです。

年齢指定の仕事は難しい

年齢指定のある仕事は、全年齢対象の仕事とはまた違う難しさがあります。

というのも、台本を見れば分かるのですが、セリフのほぼ全てが「あ……」とか「……っ」とか「あぁ……」とかだったりするのです。

ト書きはありますが、それは台本を持っている声優しか見えません。視聴者にはト書きに書かれている内容が伝わるように、「あ……」とか「……っ」とか「あぁ……」で演技をせねばならず、しかもそれらは全て同じではありません。繰り返される「あ……」とか「……っ」とか「あぁ……」を全部違うニュアンスで演じ、さらにクライマックスに向けて盛り上げていかなければいけないのです。

裏名の仕事は普通に会話が続く全年齢対象の作品の演技にはない難しさが求められ、それは表名の仕事をはるかにしのぐくらい困難なのです。

そのため、年齢指定のある仕事・裏名の仕事だとしてもそれなりにスキルのある声優が求められます。

無名でもいい、新人でもいいという「やる気があればだれでもできる」仕事ではないのです。

著名な声優になっても、裏名で年齢指定の仕事を行う声優が多いのは、そういう理由もあるのです。

参考:女性向け年齢指定作品に出演している男性声優の例 PLUS MATE

男性向け年齢指定作品に出演している女性声優の例 ミナシゴノシゴト